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神奈川県獣医師会学術症例発表会

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神奈川県獣医師会学術症例発表会 /2011年05月22日号

3月10日に開催された神奈川県獣医師会学術症例発表会にマーブル動物医療セン ターから5題の発表を行いました。そして、別府雅彦獣医師が発表した「前・後 十字靭帯断裂に内側半月板損傷を併発した猫の一例」が最優秀賞を受賞しました。

内科療法に反応しない特発性乳糜胸に対し胸管結紮術、心膜切除術を行った犬の一例

  • ○高橋洋介1)井坂光宏1)桑原岳1)荒瀬由梨恵1)別府雅彦1)松原奈美1)難波信一1)
    1)マーブル動物医療センター・神奈川県藤沢市

I.はじめに

犬の乳糜胸は稀に遭遇する胸管に由来する乳糜が胸腔内に蓄積する疾患である。 通常、乳糜は消化管リンパ節に由来するトリグリセリド(TG)を豊富に含む液体であり、胸管を通過し胸腔前部で静脈に注ぐ。 乳糜は先天性、外傷性および非外傷性によりこの流れが阻害されることで発生するが、犬では特発性が一般的であり、 呼吸困難、食欲不振、倦怠感、運動不耐性、体重減少等を呈す。 現在、乳糜胸の治療法として低脂肪食の食事療法、ルチン等の内科療法、 また外科手術として胸膜癒着術、胸管結紮術や心膜切除術等が施行される。 今回、我々は特発性乳糜胸に対し内科療法で効果が得られなかった犬に対し、胸管結紮術ならびに心膜切除術を施行した犬の一例を報告する。

II.症例

柴犬、去勢雄、4歳4カ月齢。混合ワクチン、狂犬病ワクチン、フィラリア予防歴あり。 3歳4カ月齢時、歯科処置目的のため身体検査、各種血液検査、レントゲン検査にて胸水貯留が認められた。 胸水性状は比重1.030、変性漏出液であり、TG濃度が胸水500 > 血漿44 (mg/dl)、 また心臓エコー検査ならびに甲状腺ホルモン値は正常で、胸水の細菌培養結果は陰性であった。以上から、特発性乳糜胸と診断した。

III.処置および経過

食餌を低脂肪食に変更し、ルチンを5〜150mg/kg BIDの間で報告に合わせて用量を変えて各2週間以上連続投与、 利尿剤は胸水貯留量に合わせ増減、抗生物質は1ヶ月連続投与し、胸水は必要に応じ抜去した。 初診時から8カ月経過したが内科療法により改善が認められなかったため、外科手術を施行した。 左側横臥位にし、最後肋骨後縁から腹部腱部切開を行い、回盲部リンパ節を牽引確認後、メチレンブルー染色液を注入。 その後第10-11肋間より、胸管を目視し、ヘモクリップにて胸管結紮術を施行し、続いて第6-7肋間より心膜切除術を施行後、 胸腔ドレーン設置し終了した。術後3日間はフェンタニルを投与し、術後7日目に胸腔ドレーンを除去した。 術後、一時的な皮下気腫、皮膚の壊死、脱落が認められたが、術後3カ月経過時点では皮下気腫は消失し、 胸水貯留もなく、皮膚も良化し、経過は良好である。

IV.考察

特発性乳糜胸に対する内科療法はルチンや低脂肪食等で行われるのが一般的であるが、その治療効果は一定ではない。 一方、胸管結紮術および心膜切除術を併用した外科治療効果は約80%と報告されており、乳糜胸に対する有効な治療法である。 外科手術の場合、完全な胸管結紮が達成できなかった場合に胸水の再貯留が認められる場合が多く、 この場合長期にわたり、投薬、胸水除去が必要となるため飼い主、患者への負担が非常に大きくなる。 今回の症例では左側横臥位による同時3か所切開によりリンパ管の染色、胸管結紮術および心膜切除術の同時手術が可能であり、 胸骨正中切開と比較すると比較的低侵襲に実施可能と考えられた。また、乳糜槽切除術もこの術式であれば比較的容易に同じ術創で可能であると考えられるためこの同時3か所皮膚切開による術式は犬の乳糜胸に対して有効な方法と考えられた。

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