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ひと口にガンと言っても・・・(1)/2002年07月14日号
- ここでは『ガン』について少し書いてみましょう。 ワンちゃんやネコちゃんの体にデキモノができました。病院へ来られる飼い主さんのほとんどが、「先生、ガンですか?」と尋ねます。 頭の中では『デキモノ=ガン』という図式ができあがっています。ところが外から見ただけで、ガンは診断できません。
- まず、デキモノがあったら、腫瘤(細胞がいっぱい詰まっている、いわゆるデキモノ)なのか、 それじゃないもの(膿が溜まっていたり、汚い皮脂がたまっていたり)かを判断します。これを判断するには、通常針で刺して検査します。
デキモノ検査の第一ステップ
- 針で刺して、内容物を吸引します。それから細胞検査を行います。 『腫瘍』であることが分かっても、まだこの段階で良性と悪性を判断できないものもあります。
- 腫瘍ではないもの
- 表皮封入体嚢胞(いわゆるヒトのニキビみたいなもの)、膿瘍(膿[ウミ]が溜まって腫れたもの)、胼胝、疣贅(ヒトの方ではタコとかイボといわれるもの)、その他
- 腫瘍
- 良性腫瘍、悪性腫瘍(ガンや肉腫とよばれるもの)
デキモノ検査の第二ステップ
- 全身麻酔をかけて、デキモノを全部または一部を取ってしまいます。 これを検査センターに出します。何日か後に結果が送られてきて、そのデキモノが良性なのか悪性なのかが分かります。 また何の細胞がガンになっているのかも分かります。
- もしもデキモノが腫瘍の場合、良性であれ悪性であれ、組織検査をしなければ詳しいことは分かりません。 デキモノを取る手術してもらって『ガンみたいですね』とか、『ガンだと思います』というような回答が返ってきたら、 『何というガンですか?』と質問してみましょう。なぜ、これを聞くのが大切かと言いますと、「手術後に抗ガン剤を使えば、生活の質向上と生存期間が延びる事が証明されているガンがある。」からです。これを知った上で抗ガン剤による治療を拒否するか、受け入れるかを判断した方が良いと思います。もちろん飼い主さんによって価値観や経済状態が異なります。しかし理解した上で物事を決めるのと、分からずに決めるのには大きな差があると思っています。
「飼い主さんの判断が一番正しい。その判断に必要な知識を正しく伝えることが私たちの仕事」のひとつだと思っています。
つづく