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「先生、うちの子が2,3日前から吐いてるんですけれど、お薬だけ出してもらえますか?」とか、「うちの子下痢してるんですけど、お薬頂けますか?」と電話で対応することが良くあります。「吐いたり、下痢したりする原因には沢山ありますから、原因によってお出しする薬が違うんですよ。ですから診察してからにしましょう。」と言うのがいつもの答えです。「事情があって、どうしても!!」と言われると、お薬を出すこともありますが、ほとんどの場合、何日か後にワンちゃんと会うことになります。今回は動物病院で良く聞く言葉「下痢(げり)と嘔吐(おうと)」について書いてみることにしましょう。
私たち人間は、どんな時に気持ち悪くなって吐いてしまうでしょう?? 乗り物酔い、お酒の飲み過ぎ、悪阻(つわり)などが、すぐに思いつく原因ですよね。その他にちょっと考えてみると、胃腸に病気があったり、中には眩暈(めまい)などから吐き気が起こる事もあります。ワンちゃんも基本的には私たち人間と同じように考えて良いと思います。まぁ、「お酒の飲み過ぎ」はワンちゃんにはないと思いますが(^^;;;
「嘔吐」をお話しする前に必ず区別しておかなければならないことがあります。それは、ワンちゃんの「吐出(としゅつ)」、「咳」、「ギャギングgaging」です。お家で区別してみたい飼い主さんのために「嘔吐、吐出、咳、ギャギング」の区別の仕方を挙げておきます。1)吐く前に動いているのがお腹(嘔吐)、2)前ぶれもなく吐き出して、出たものは食べ物で全然消化されていない(吐出)、3)胸を激しく動かしながら頭を下にして首を伸ばしている(咳)、4)咳の最後に「ガーーーッ」という吐くような仕草
(ギャギング)という具合です。ハッキリしない場合は診察注に私が実際にやってみると「あぁ、それそれ」と区別がつき易くなります。それでもハッキリしない場合にはワンちゃんを預かって観察することもあります。こうやって「間違いなく嘔吐」と言うことになると、その方向で検査を進めることになります。よく行われる検査には、レントゲン検査、造影検査(バリウムなどを飲ませて、通過しているかどうかの検査)、検便があります。また患者さんによっては血液検査やその他の詳しい検査も必要になることがあります。
ワンちゃんの嘔吐の原因としてよくみられるものについて書いてみましょう。
異物(いぶつ):食べ物じゃないものを食べてしまって、食道や胃に炎症が起きてしまったり、詰まったり刺さったりして嘔吐が起こります。中には細長いものを食べてしまって、腸に絡まってしまうこともあります。
今まで当院で摘出したものには、硬貨(各種)、ゴルフボール、釣り針、ハムを巻いているヒモ、パンティーストッキング、木のクズ、ボールペン、石ころなどがあります。釣り針を飲んだ子達は何頭かいましたが、ほとんどが内視鏡(俗に言う胃カメラ)で取り出せました。唯一、内視鏡だけでは取り出せなかった子がいます。海釣りに行った飼い主さんが、「コマセ(魚が寄ってくるように海に撒くもので、小さなエビを使っている)」の中に針の付いた仕掛けを何本か作ってあったそうです。連れて行ったワンちゃんが針ごと一気に食べてしまい、来院して摘出したというものです(写真)。口からは釣り糸が出ているものの、引っ張るわけにもいきません。もし引っ張ってしまったら、針がもっと深く刺さってしまったり、食道の近くにある大きな血管や肺を傷つけてしまう可能性があったからです。この子は内視鏡だけでは取りきれず、胃を開けて摘出することになり大騒動になった経験があります。釣りや海岸の散歩でワンちゃんが針を飲み込んでも、糸が出ているからと言って呉々も引っ張らないようにしてくださいね。
と、原稿をここまで書いたところで、コニーちゃんがやってきました。「食欲も元気もなく、嘔吐を繰り返している」ということで、掛かり付けの先生の所で検査しました。すると、胃の出口に何か詰まっている可能性が高いと言うことから内視鏡検査をするために当院へやってきました。飼い主さんは「食べ物以外には食べていないと思うのですが。。。」と言われたんですが、取れたのは「ウメの種」でした(写真)。こんな大きなものでもレントゲン検査だけでは分からないことが多いものです。レントゲンで分かるのは、金属や石など、とても硬いものに限られます。ツマヨウジや竹串などは分からないことが多いですから、ワンちゃんの口に入る可能性のあるものは届かないところに置いて、たまには数を確認してくださいね。
胃腸炎:ご存じの通り、胃腸に炎症が起きれば嘔吐することが多いものです。炎症を起こす原因には、異物は通過したものの胃腸を傷つけてしまった、感染症、粘膜に炎症を起こす化学薬品を飲んでしまった、薬の副作用、腎臓病によって粘膜に炎症が起きてしまった、などがあります。感染症として有名なのはパルボウイルス感染症という病気です。予防注射を受けるワンちゃんが多くなったことと、衛生状態が良くなったことから、最近は少なくなってきましたが、まだ年に何頭かは診ます。このパルボウイルスの場合、腸の粘膜にヒドイ炎症を起こして、嘔吐と下痢を引き起こします。進んでしまうと、血液が混じった下痢のウンチをするようになります。同時に嘔吐が止まらなくなって、水を飲んでも吐くようになります。この場合には一刻も早く動物病院で手当をする必要があります。
ここ何年かで「電池」が段々小型になってきました。これを飲んでしまうと、また厄介なことになります。「電池くらい。。。中身が出るまでには時間が掛かるだろう」と思ってはイケマセン。小型になったお陰で、電化製品は小型になりましたが、飲み込んでしまうと+極と−極が近く、胃腸の中は湿気が多いので簡単に通電してしまいます。その部分から炎症、潰瘍(かいよう)と進みます。もしも、ワンちゃんが飲んだかも知れない時はすぐに動物病院へ行った方が良いと思います。でないと、潰瘍になるスピードが他の原因と比べると無茶苦茶速いからです。どうしても行けない場合には、無理矢理水を飲ませます。こうすることで電池を消耗させて胃腸への通電を少なくすることができます。「ホントかなぁ。。。」とお思いの方、実はヒトの乳幼児が電池を飲む事故が多くなっているらしく、ワンちゃんでも同じ事故が発生しています。この対策として「水を飲ませると電池が速く消耗して、潰瘍を起こすスピードを遅くすることができる」のは既に実証済みです。
さて皮膚病や他の病気を治すのに飲ませる薬で胃腸炎を起こすことがあります。特に抗生物質の一部やステロイド剤で起こすのが有名です。もしも「薬を飲ませ始めてから吐くようになって、薬を止めれば吐かない」というような場合には、動物病院に相談して対策を立てましょう。「薬を飲んだら吐くし、飲まなければ病気がよくならない」なんて言う時には違う薬に変えたり、量を減らしたりすることで調節します。呉々も掛かり付けの先生に相談してやらないと、病気が治らなくなってしまいますのでご注意下さいね。それからワンちゃんにも個体差(ヒトで言う個人差)があります。同じ量の薬を飲んでも大丈夫な子と大丈夫じゃない子がいます。簡単に言うと「薬が合わない」こともあると言うことです。この場合もまた掛かり付けの先生に相談した方が良いと思います。
中耳炎がヒドくなって吐いている!? :原因の中に「中耳炎がヒドくなって嘔吐している」というのがあります。外耳炎から中耳炎、内耳炎と進んで、ついには脳や脳に近いところに炎症が起きると嘔吐が始まります。ヒトで言うと「めまいがして、気持ち悪くなって吐く」とか「乗り物酔い」に近い状態になります。この原因で吐いているワンちゃんの眼を診てみると、目の玉がキュッ、キュッと痙攣を起こしているような動きになっていることが多いものです。これを「眼球振盪(がんきゅうしんとう)」と言います。多分、ヒトと同じようにめまいがしていると考えられています。
最近、外耳炎のワンちゃんを沢山診察しますが、「なかなか治らない」ことと「治ってもすぐに再発する」ことから飼い主さんが諦めてしまったり、途中で治療をしなくなってしまうことがあります。こうなると中耳炎に進行してしまい、最後には脳や脳の近くに炎症が広がる危険性が高くなりますので、「単なる外耳炎」とタカをくくらない方がよいと思います。治らない病気でも、「管理」することがとても大切ですからね。
悪阻(つわり):ワンちゃんが妊娠するとツワリのみられる子とみられない子がいます。どちらかと言うとみられない子が多いように感じていますが、相談を受けるのは「ツワリのある子」が断然多いものです。交配して2週目頃から5週目頃までのうち1週間程度、吐いたり食欲がなくなったりすることがあります。通常の妊娠でもみられるんですが、あまりヒドイ場合には「薬を使わずに点滴だけ」したりすることがあります。5週目を過ぎると自然に吐かなくなるのが通常です。ツワリが原因で吐いている場合には、胎児への影響も考えて薬はほとんど使いません。
いかがでしょうか? ワンちゃんが吐く原因も沢山のことを考えなければなりません。呉々も手当が遅くならないように気を付けましょう(^_^)/。 |