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いやぁ〜、驚きました。何とこの原稿を書いているのは病院のベッドの上。いやいや自分の動物病院ではなく、ヒトの病院ですよ、ヒトの!! 実は、事もあろうに自分自身の誕生日、急性扁桃周囲炎で「ツバ」も飲み込めず2日間我慢したものの良くなる気配が一向になかったので、休日医療センターに行きました。そしたら「これからすぐに市民病院の救急外来をで受けて下さい」とのこと。言われるがままに市民病院救急センター、いわゆるあこがれの「ER」に到着したわけです。血液検査、尿検査、喉頭鏡検査があって「今日から入院できますか?」と聞かれたので、本心「ヤダ!!」と思ったんですが、身体に聞いてみると「入院しようぜ!!」と言われたので、今ベッドの上で原稿を打っている次第となったわけです。「転んでもタダでは起きない」が信条。今まで入院なんてした事がなかったので、ここはひとつ「動物はどんな感じで診療を受けているのかなぁ。」と思いながら自分自身の診療を受けるようにしてみました。
まず休日診療。これは動物病院によって休診日が違いますので、「いざ」という時に全部の病院が閉まっている事はあまりないでしょう。でもふと思いました。「まぁ、必要性があまりないんだろうけれど、そういえば○○市立動物病院とか、××県立動物病院ってないなぁ。」一個人としての単純な疑問でした。これも自分が獣医師だからそう思ったんでしょうけれど。それから夜間救急病院。これは地域によって、獣医師会で夜間の救急当番がある地区や夜間診療所を開設しているところがあります。もちろん個人開業の先生でも24時間診療されているところもあります。どこでもそうでしょうが、一人の獣医師が完全に24時間はカバーできません。ここにしたって2交代、いや3交代制でしょうし、医師、獣医師だって人間です。休みは必要です。「複数の獣医師がいて、財政面でのバックアップがない限り各地域に夜間診療センター的な動物病院はできないんじゃないかなぁ。」と言うのが正直な感想です。景気が低迷して地方自治体の予算減少の中、「公立の動物病院を!!」なんて言えないですもんね。そうなると、やっぱり地域の獣医師達が立ち上がらないと。。。うむ、退院したら考えよう。
さて初日は休日診療所と救急センターで何回か針を刺されました。えーっと、点滴の時に2回、血液検査の時に3回、扁桃腺の穿刺(せんし:針でつついて膿などを出す技)、扁桃腺の切開。。。これくらいだったかな。すっごくちっちゃな事なんですけど、医師や看護婦さんに「ちょっと痛いですからねぇ〜。」って、お愛想でも言われたら「よっしゃ!!」と気合いが入ります。でも「じゃぁ、ハイ。。。」と無愛想にグサッとやられると痛さ10倍。無防備なところを背後から。。。みたいな感じです。ここで考えたこと。「言葉が分からなくてもいいから、注射を打つ時は『ガマンだぞぉ!!』とか、『ちょっと痛いぞぉ〜!!』って声をかけてあげなきゃ。」実際、動物にとっては、注射を打つ時っていつだって突然身体に針を刺されるようなもんですからね。次が問題の扁桃穿穿刺と切開。まずは扁桃腺に表面麻酔(歯医者さんで麻酔を打つ前に歯グキの表面をしびれさせるヤツ)をして、それからグサーーーッって感じ。表面麻酔がなければ、もっと痛いんだろうけれども、それでも「ヒィ〜!」って感じでした。デキモノや腫れ物ができた時によく獣医師は針で穿刺をします。ワンちゃんと人間では痛みに対する感覚も違うと言われていますが、差はあっても痛みは痛み。「少しでも和らげるように工夫してあげたいなぁ。」
ワンちゃんでもよく使いますが、血管の中に留置針(りゅうちしん)という柔らかい針を置いておいて、点滴するのに使います。もちろん人間にも使うんですが、ここで経験した事一つ。この留置針が血液の成分で詰まってしまった時、それを取り除くのにヘパリンという液でフラッシュして詰まった物を取り除きます。問題はここです。ワンちゃんの血液には、ヒトと比べて粘度が高く固まりやすい性質があります。ですからこの留置針が点滴中に結構詰まることが多いんです。詰まったらヘパリンでフラッシュ。何気なくやっていたことなんですが、時々ワンちゃんがフラッシュするたびに前足を「キュッ」と引っ込めます。今までは気にもとめていなかったんですが、自分がやられてみると場合によっては「ギュッ」と痛みが走ります。その瞬間、「あぁ、だからワンちゃんもフラッシュした時に足を引っ込めることがあるんだ」と分かりました。「まぁ、声をかけるのが関の山だけど、今度から声をかけてやってあげよう。」
「まぁ、長い入院生活になる予定はないので、面会なんてどうでもいいや。」とは強がりの弁。絶対に面会に来てもらった方が良いと感じましたよ。病院内で1日を送っていると、朝ご飯食べて、診察と治療があって、昼ご飯食べて、原稿書いて(笑)、夕ご飯食べて寝る。。。変化のない生活が続きます。面会時間に誰かが来てくれると、笑顔になったり、喋ってみたり、大きな気分転換になります。家族が来て会話がなくてもちょっと「ホッ」とできる。これって「すっごく大切なんだなぁ」としみじみ感じました。動物病院によっては「面会の後、ワンちゃんが寂しがったり、興奮するから」と面会できない病院もあります。これはこれで一理ありますし、考え方も様々ですので、合っているとか間違っているというのではありませんが、自分がこういう状況に陥ったからでしょうか。。。できるだけうちの病院に入院したワンちゃんやネコちゃんには飼い主さんと接触する機会を積極的に増やしていこうと思うようになりました。それまでも面会はできていたんですが、こちらから積極的に来てもらおうと思っています。ワンちゃんがどう考えるか分かりませんが、きっと「早く良くなって、おうちに帰るだワン!」と思ってくれる、なんて考えるのは、人間のエゴでしょうか(苦笑)。
患者さんが十人十色のように医師や獣医師のキャラクターも様々です。忙しいとなかなか笑顔が出てきません。でもきっと患者は笑顔一つで安心できるものなんだとつくづく感じました。ワンちゃんだって獣医師の顔色は多少分かるでしょうし、飼い主さんは獣医師の一言で安心したり、不安になったりするものなんですよね。こんな事は頭の中では、開業当初から、いや獣医師になりたての頃から分かっていることなんですけど、実際にはできていません。極力気を付けて、ワンちゃんや飼い主さんに安心してもらえたらなぁ、と思います。それから入院中に看護婦さんに声をかけてもらえると、「嬉しい」ものです(何だか、私がワンちゃんの様になってきましたね)。そう感じながら、うちの病院にも看護士さん達がいますが、彼女たちは結構入院している子達に声をかけてあげていた事を思い出しました。きっとワンちゃん達も声をかけられると嬉しいんでしょうね。ヒマを作ってできるだけ声をかける様にしたいと思いました。「自分が嬉しかった事は、きっとワンちゃん達もうれしい。」
ワンちゃん達は野生の頃、弱肉強食の世界を生きていました。怪我をしても、少々具合が悪くてもガマンしてしまいます。何故でしょう? それは、もし具合が悪くて弱っているところを見せると、外敵に襲われてしまうからです。できるだけガマンして、外から見ても平気そうに「見せる」んです。私たち人間が病気を見つける上では、これが困ったことの一つになります。一番ワンちゃんのことをよく分かっている飼い主さん達が「最近、何だか・・・」と言われると我々獣医師は「ん?」と思うことになります。飼い主さんにとっては「大したことない」が、実はワンちゃんにとっては「ガマンしているだけ」という事かもしれません。よく飼い主さんが「昨日から急に・・・」とかって言うのは、ワンちゃんの体がガマンの限界を越えたっていう事が多いものです。獣医師に検査を勧められたらできるだけ積極的に受けるようにしましょう。検査結果が分からなければ、分かるまで質問してみましょう。「ワンちゃんがガマンできなくなると、急に症状が出てくる。」
と言うわけで、ひょんな事から自分が入院してみて、改めて自分の病院や入院しているワンちゃん達の事を別の角度から見ることができました。この貴重な経験を元に日々の診療に復帰したいと思います。
何だか、反省文みたいになっちゃいましたね(^^;;;。
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