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今までの原稿とちょっと指向を変えて、たまには私がメインになって書いてみましょう。
「今更フィラリアの話なんて!!」と思われるかもしれませんが、私の病院で実際にあった話を書いてみますので、読んでみて下さいね。
<怖い話−その1>
今年7歳になるドンちゃんがフィラリア予防にやってきました。カルテを見てみると、去年は8月分までしか薬を持って行っていませんでした。
私「あれ? 5歳になった一昨年までちゃんとやってたのに、去年はどうしたの?」
飼い主さん「いやぁ〜、5年間せっせとフィーラリアの予防をやってても毎年検査で出ないから、まぁ3ヶ月もやっとけばいいやって思ったんですよ、ハハハ。」
私「検査で出ないと良いですね。」
飼い主さん「隣の家のワンちゃんも2年前に3ヶ月しか飲ませなくて、去年の検査が大丈夫だって言ってたから、たぶん出ないと思いますよ、ハハハ。」
私「じゃぁ、少し待ってて下さいね。」
――検査をしてみるとミクロフィラリアが血液の中を泳いでました。それも元気良く。。。顕微鏡を見た飼い主さんを見ていると、力無く目が泳いでました。。。――
飼い主さん「だって、隣の家の人が『大丈夫!!』って言ったから・・・。」
私「その方はたまたま運が良かったんでしょう。でも今年も同じように出なくて済むとは限りませんよ。じゃぁ、治療に入りましょうね。」
飼い主さん「あーーー、ちゃんとやっとけば良かった。。。ドンちゃんゴメンな。」
と言いながら何度もワンちゃんに謝ってました。
日本の北と南で蚊の飛ぶ時期、吸血する時期が違いますので、地区によって予防期間は違ってきます。現在、日本で認可されている1ヶ月に1回飲ませる薬は、「蚊が飛び始めてから1ヶ月後に始めて、蚊が飛び終わって1ヶ月後まで続ける必要がある。」と簡単にまとめる事ができます。
後日、ドンちゃんの隣のうちのコロちゃんが検査に来ましたが、やっぱり検査で出てしまいました。
“気を付けよう! 他人の運が自分の運とは限らない。” お粗末様でした(笑)。
<怖い話−その2>
今年5歳になるヨーキーのモモちゃんは一戸建ての家で室内犬として飼われていました。もちろん散歩にも行きます。今回は健康診断のために初めてうちの病院にやってきました。飼い主さんが血液検査やレントゲンも希望されたので、一連の検査を行いました。するとやっぱりフィラリアが出てきてました。
私「あのぉ。。。フィラリアが出てるんですけど、予防ってされてないんですか?」
飼い主さん「あらっ!! ここの先生って冗談がお好きねぇ。もぉ、室内で飼ってますもの、『予防なんていらない!!』ってみなさん言ってるわよ。」
と言いながら、飼い主さんは顕微鏡をのぞきました。私は説明しながら、飼い主さんの顔色が変わっていくのが分かりました。
飼い主さん「おかしいわ!! 先生、他に検査はないの??」
私「ありますよ。でも一番簡単確実で、お金のかからない方法でやって出てるんですから、これ以上やっても結果は同じなんですけど。。。それでもやりますか??」
私も根負けして、あと2種類の検査をしましたが、結果が変わるはずもありません。
私「いくら室内犬でも、散歩に行って蚊に刺されれば感染する可能性があるんですよ。運が悪いと、部屋に1匹の蚊が入って来ただけでも理論的には感染する可能性があるんです。だから室内犬と言えども予防するのに越した事はないんですよ。」
飼い主さん「ご近所の方が、あまりにも『室内犬は大丈夫!!』って言うし。。。あぁ、どうしましょう。。。」
私「まぁ、頑張って治療しましょうね。」
室内犬と言えど、散歩をしていれば蚊に刺される可能性はあります。いや、蚊に刺されるのが当たり前と言っても言い過ぎではないでしょう。家から一歩も出さないワンちゃんでも、ちょっとドアを開けた隙に蚊が入る事もあるでしょう。高層マンションで飼われている場合、「蚊の飛翔能力は二階まで!!」が定説ですが、エレベーターで上がってくる事もあるんです。実際、4階以上に住んでいる方で蚊を見た経験のある方は少なくないはずです。万が一を考えて加入する生命保険。フィラリア予防も同じでは??
“室内犬、散歩してても蚊は狙う。” お粗末様でした(笑)。
<怖い話−その3>
急患で柴犬のタロウちゃんが運ばれてきました。息が苦しそうで、口からは血が出ています。救急検査と救急処置をしましたが、帰らぬ犬となってしまいました。。。フィラリア検査は陽性でした。カルテを見てみると、一昨年はフィラリアの予防薬をきっちりと持って行っていましたが、去年の予防欄は空白でした。飼い主さんがひとしきり泣いた後、不思議に思ってちょっとずつ話を聞いてみました。
私「一昨年までフィラリアの予防をしてたのに、去年は来なかったですねぇ。」
飼い主さん「色々と事情があって、去年は予防してやれなかったんです。それで、どういう訳か一昨年の薬が1個余っていたもんで、今日飲ませたんですけれど、ちょっと経ったらおかしくなっちゃって。。。」
私「そうでしたか。飼い主さんの事情で去年来られなかったのは仕方ないと思いますが、検査をせずに予防薬を飲ませてしまったという訳ですね。。。」
飼い主さん「それがいけなかったんでしょうか?」
私「おそらくそうでしょうね。。。フィラリアが入っているワンちゃんに、直接予防薬を飲ませると命を落としてしまう事が多いんです。ですから予防薬の説明書には、『投薬する前には必ず血液検査を行ってください。』という意味の文章が書いてあって、もしフィラリアが心臓に入っている場合には、普通に予防薬を飲ませずに、別の方法で対処するんですよ。」
飼い主さん「あぁ、そう言えば、ここの病院から来た案内に『毎年、予防する前に血液検査を受けましょう!!』って書いてありましたね。。。ちゃんとやっておけば良かった。。。」
私「・・・そうですね・・・」
この飼い主さんは泣きながらワンちゃんを抱いて帰りました。
“何となく、いいかと思ってした事が、後の祭りの事がある。”
シーズンになると決まったように葉書が来て、決まったようにワンちゃんを病院に連れて行く。毎年必ず予防できていればいいんですが、ちょっとした事情で連れて行けなかった時など、病院に問い合わせをしてから予防薬を飲ませるのに、そんなに手間暇はかかりません。大切な命、少しの気遣いで亡くさずに済みますから、是非とも掛かり付けの動物病院にお問い合わせを。
この号が発行される時期はフィラリア予防真っ盛りの頃だと思いますが、まさか「今年はまだ。」なんて言う読者の方はいませんよね?(笑)
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